実家で暮らす高齢の親の、呼び寄せには大きく2つのやり方があります。今住んでいる家に親を迎え入れる「同居」と、往来ができる範囲に部屋を借りて住んでもらう「近居」です。
我が家は最初に「同居」しましたが失敗し、その経験を活かし1年ほど前から「近居」をしています。
その経験を元に「実家の親の呼び寄せを成功させる秘訣」をまとめました。
お父さんとお母さんに近くのマンションに住んでもらって本当に良かったわね。以前のように同居はしてないけど、近くに住んでいるだけでも安心よ
お互いあまり気をつかわなくていいから、同居よりずいぶん楽だよね。親子関係もよくなったよ
同居した頃はお母さんたちもまだ今より若かったし、なにより私たちがどう接したらいいか分かってなかったわよね
なんでこうなるの?って分からないことだらけだったけど、いろいろと失敗して学んだよ
親がまだ独立して暮らせそうなら、近居はおすすめだね。親だけではなく子供側の負担や安心を得ることができる。でも、実際に経験しないと分からないことも多いから、パパさんたちの経験は役立つと思うよ
目次
呼び寄せ近居を成功させる秘訣
1. 親を呼び寄せる側の意識を見直す
親孝行の気持ちから「呼び寄せ」したのに、新しい暮らしが、親にとってこれまでより心地よいものとならなければやる意味がありません。
そのためには、親を呼び寄せる子供側の意識が大切です。
我が家が「呼び寄せ同居」に失敗した時の経験を「実家の親の”呼び寄せ同居” が失敗した4つの理由」という記事にまとめましたのでそちらもご覧ください。ポイントは、次の4つの意識を持たないようにすることです。
- 「親のためにしてあげている」という意識
- 親を自分のやり方に無理やり従わせようとする
- 無理に新しい生活に慣れさせようとする
- 親に負い目を感じさせる
2. 親の意思や希望を尊重しながら進めていく
「呼び寄せ近居」ということは、親にとっては長く過ごした我が家(実家)を離れるということを意味します。子供の近くに住めるという安心感もありますが、住み慣れた場所を離れるのはとても辛く寂しい決断です。
そこまでの決断を強いるのですから、子供は親の意思や希望をできるだけ尊重しながら話を進めていく必要があります。
・物件探しには親も連れて行き実際に物件を見てもらう
・生活で不便がありそうなことはすべて洗い出し、それに対する対策案を考え対応する(例.トイレや風呂の手すり等)
・物件の契約・転出入の手続き等を一緒に対応する
・新しい住居の挨拶回りや、知人等への転居葉書を作成する
・引越し手続き、新居のガス・水道・電気・電話・WIFI等、生活に必要なインフラを整える
・候補となるデイサービスに親を連れて見学に行き、実際に通う親が希望するところと契約する
・ケアマネジャーの訪問時には同席し、親の希望が実現されるようにサポートする
・実家の土地と家の売却・整理について親の希望に沿って進める
とはいえ、高齢の親は持っている知識も古く、判断力も衰えています。親の意思や希望を尊重しますが、最終的には子供が責任を持って決断することになります。
結局、呼び寄せ側の子供がほとんどすべてのことをやることになります。その手間と労力は相当なものですが、最初がなによりも肝心です。親のため、そして呼び寄せる側の自分・家族のために頑張ってください。
近居の話しが出た最初のころ、父親は「実家を離れたくない」と言い張りました。しかし、母親が老々介護に疲れ切っており、母親が倒れでもしたらどうしようもないため、近居してもらうことを説得しました
賃貸物件は親の希望を尊重しにくいものです。「実家の親を呼び寄せるための、賃貸物件を探すチェックポイント」はこちらの記事をご覧ください。
3. すべてを受け入れる覚悟をする
親を実家から「呼び寄せ」るということは、その先の親の人生全てを面倒見るという覚悟が必要です。もちろん状況が変って、予定通りにいかないこともあります。しかし、中途半端な気持ちでは失敗します。
今後起こるかもしれないことを想像し、それらを受け入れる覚悟があるかを自問してみてください。
我が家は、期間定めた「半同居」という中途半端な形で失敗しました。親を呼び寄せるのであれば、お互い「片道切符」の覚悟がないとうまくいきません。
4. 安心感を持てるよう言葉できちんと伝える
呼び寄せに関わるさまざまな手続き(上記2. 参照)を子供が真摯に進めていると、親は「呼び寄せ近居」に対して、徐々に安心感を持つようになります。
しかし、高齢の親というのは、概して心配性で不安や悩みが多いものです。「高齢の親が不安や心配を口にしたときの対応」に書きましたが、高齢の親の不安や心配を取り除くためには、これから先の姿を見せ、安心させてあげることが必要です。
そのためには、想定しているこれから先の計画をきちんと提示してあげることが大切です。
上記3.のような状況になったらどうするのか。どんな時にでも親を見捨てない、親の人生全てを面倒見るという覚悟が聞ければ、親も安心して新しい土地で暮らすことができます。
5. 環境変化はできるだけ少なくする
新しい場所で暮らすということは、大きな環境の変化です。しかし、高齢の親は環境の変化に慣れる柔軟性が乏しく、場合によっては体や心に影響が出てきます。
上記3.のように親の意思や希望を尊重しながら進めますが、そのほかにも以下のようなことに気を付けました。
・できるだけ実家で使い慣れていたものを持ってきて使う
・寝返りは癖なので、ベットの向きは今までと同じにする
・寝室の通気口の音が気になるというので、通気口をビニールで囲い空気が通らないようにした
・部屋に観葉植物を置いて、少しでも自然に触れられるようにした
父親は時々、今でも実家で暮らしていると錯覚しているようなことを口にするんだ
引越しして少ししたら「部屋の隅に老婆が立っている」とか、「天井からネズミが落ちてきて背中に入った」とか変なことを言うことが多くなってきたわね
お医者さんが言うには、それは「レビー小体型認知症」の症状みたい。パーキンソン病の人はなりやすいから仕方がないんだって。環境変化が影響したのかな
6. 生活をフォローし問題が起きた時に対応する
引越した後も、生活リズムが整うまで様々なことが必要になります。問題が発生することもありますし、問題が起きないように事前にすることもあります。それはすべて子供側の仕事です。
そして、それが積み上がっていくと「子供が近くにいると安心」という安心感・信頼感を持ってもらえるようになります。
・必要があれば病院・市役所等へ連れて行くする
・ケアマネジャーや介護施設の人との打ち合わせに同席する
・介護の手が必要な時に駆けつけて対応する(足の不自由な父はよく転倒します。母親の力では起こせないため、私が呼ばれます)
・たまに留守宅の確認のために実家に連れて行き、換気をしたり、使うものを持ってきたりする
・大きな物や大量の買い物が必要な時は同行する
・実家の売却・整理の手続きの全てに対応する
実家に住んでいた親は、毎月賃料を払って家に住むということに慣れてません。毎月貯金が減っていくことに恐怖心があり、お金の悩みを良く口にするようになりました
お母さんは年とってから家計簿もつけてなかったからどれだけ支出があるかも分かってなかったわ。支出・年金・貯金を洗い出して、パソコンでシュミレーションしたら少しは安心してくれたみたい
7. 新居に引っ越したメリットを感じてもらう
住み慣れた実家を離れ、子供の家の近くに引っ越したのに、以前とあまり変わらない生活なら、近居した意味を感じてもらえません。
子供たちの近くに住んでいることにより、安心感が増え、楽しみが増えたと実感してもらえることが大切です。
上記の1~6. をすれば、親は近居を始めたメリットを十分感じてくれるでしょう。それに加え、我が家では次のようなこともしていますのでご紹介します。
・週末は父親を車椅子に乗せて散歩に連れ出す
・老人2人だけの食事は退屈なので、たまに夕食を食べに訪問する(人のために夕食を作ることは、母親の喜びにもなる)
・楽しみのために外食などに連れて行く
・TVやインターネットを見るためのタブレット・アマゾンプライムなどをプレゼントし使い方を教える
・楽しみが増えるよう、一緒にメルカリで中古品販売をおこなう
実家を離れる前、母親は「孫が実家が好きだから、実家を離れるのが残念」と言ってたけど、新居に来た孫が「こっちの方が綺麗だしショッピングモールが近いから実家より好き」と言ったのを聞いてズッコケたよ
お兄さんの子供たちも新居に来るのが楽しみなようだし、お母さんもよろこんでるから良かったじゃない
最後に
実家から高齢の親を呼び寄せることは、大きな賭けでもあり、とても大変なことです。
だからこそ、呼び寄せる子供側の意識や態度が成功の秘訣となります。呼び寄せ近居に対して親がメリットを感じ、その生活に安心感と喜びを持ってもらえなければ失敗です。
親も子もそれなりの「覚悟」を持って取り組むことなのです。
ちなみに私は、病気になったということもあり、親と近居して間もなく、これまで勤めてきた会社を退職して家で仕事を始めることにしました。自由にできる時間が取れるようになったため、さまざまなことに対応できているという面もあります。
多くの人は、会社を辞めるという決断は取れません。
そういう場合でも、近居は、子供側の生活や状況を見てもらえるというメリットがあります。「呼び寄せ近居」を成功させるためには、子供側が持つ親孝行の気持ちをブラさないことが第一です。その上で、親にも子供側の生活を理解してもらい、できること、できないことをお互いが納得してすすめることが重要です。
また、「呼び寄せ近居」には、配偶者や家族の理解・協力も必要です。そのためには自分の親だけでなく、配偶者側の親孝行も平等に行うことを怠らないことが大切です。