親が住んでいる実家をこの先どうしようか。誰も住んでおらず放置してある実家をどう処分しようか。そんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
我が家では年老いた両親を、近くのマンションに呼び寄せました。その後半年間、実家を空き家のまま放置していましたが、10ヶ月ほど前に不動産会社と売却手続きの契約(媒介契約)を結びました。
親が高齢なので、私が代わりに売却手続きを進めてきました。しかし、10ヶ月が経った現時点でも買い手はまだ決まっていません。
その理由は、我が家の実家は買い手が付きづらい土地だったからです。
実家の土地を両親が購入した当時は、まだ融通の利く世の中だったのでしょう。そのころは大きな問題とはならなかったことでも、今の時代には問題となることもあるようです。
売却手続きをしてみて、初めて分かった事実です。
ちなみに実家は築40年と古いため、「一戸建て(家)」ではなく「土地」として売りに出していました。しかし、「家」として購入し、リフォームして住みたいという話しもありました。
しかし、半年の間、誰も住まずに空き家にしていたため、家の老朽化はどんどん進んでいました。結局、リフォーム代が想定より高額となり、その話しも消えてしまいました。
この記事では、これから先、実家の売却が必要となる人に向けて、早めに知っておくとよいことをまとめました。実家を売り始めて判明したことや、しばらく空き家にしていたから分かったことなどを紹介します。
我が家の実家にこんなにたくさん問題があるとは思わなかったよ。
両親が引越した当時は、新しい生活に慣れてもらうのが最優先だったから、「実家の処分」は落ち着いたころを見計らって取り掛かったけど。こんなに長い間買い手がつかないなんて、予想外だった
当時はお母さんも「実家に戻りたい」なんて言ってたから「実家を売却する」なんて話は持ち出せなかったわ。長年住んだ実家を離れて気持ちが不安定な時期だったから、仕方ないわよ
でも、売却を困難にする要素がこんなにあったなんて、不動産屋に指摘されるまで知らなかった。売却にかかる費用は売れるまでかからないし、不動産屋との契約も3ヶ月で結べるから、媒介契約だけでも早めにしておけばよかったよ
もし買いたいという人が現れても、価格や条件に納得いかなければ、売らなきゃいいだけの話しだしね。その辺のことも知らなかったわ
パパさんは苦労して大変だけど、土地の売却なんて滅多に経験できることじゃないからいい勉強ともいえるね。ほかの人の参考にもなるから記事にまとめてみて
目次
不動産屋に指摘されて初めて知った実家の問題
上の図は我が家の実家の見取り図です。媒介契約を結んだ不動産屋からいくつかの問題点が指摘されました。
「接道義務」の問題
この「接道義務」は聞いたことがある人も多いと思います。私も聞いたことはありましたが、まさか自分の実家がそれに関係するとは思っていませんでした。
「接道義務」とは次のようなものを言います。
・建築基準法で定められた、都市計画区域や準都市計画区域に指定された土地にだけ課せられる義務(接道義務が課せられない土地もある)
・建築物の敷地が、原則として幅4mの道路に2m以上接していなければいけない
「接道義務」とは、災害時の避難経路や緊急車両の経路確保を目的に義務付けられました。日々の生活では何の不都合もなかったのですが、法律的には不都合があったのです。
なんと我が家の土地は、4m道路に1.9mしか接していなかったのです。
不動産屋曰く、道路に2m接していないと、土地を購入した人が家を新築するときに建設許可が下りないそうです。すなわち、今ある家をリフォームして使う分には問題ありませんが、新築できないため「土地の価値」が下がるということです。
両親が家を建てた当時でも同じ法律はありました。しかし新築できたということは、その当時はそれほど厳しくなかったのかもしれません。
「崖(がけ)条例」の問題
「崖条例」は土地が崖(土手)に面した場所にある住宅が対象となる条例で、次のような定めになっています。
・一定の高さを超える崖の上又は下に建築物を新築する場合、周りの崖の高さの2倍の距離を崖から離して、建築しなければならない
この条例は地震や豪雨による崖崩れの危険を想定して、実家のある自治体で作られたものです。しかし、災害の多い昨今では、多くの地域で似たような条例があるようです。
私は、この条例の存在を知りませんでしたが、土地購入者が家を新築する場合にもろに影響がでます。これも「土地の価値」を下げ、買い手をつきづらくする要因です。
もし、実家の土地が崖に面しているようであれば、早めに調べておくとよいでしょう。
その土地特有の問題
他人の土地を通っている水道管の借地料
上の図にある通り、我が家の実家の水道管は他人が所有する土手(崖)の地中を通って引かれています。不動産屋からは、その土地(土手)を所有している地主と覚書を交わすように依頼がありました。
新たに土地を購入した人も、これまで通り水道管を無償で使わせてもらうための覚書です。
しかし、その地主は「新しい人からは、水道管の通っている土地の借地料をもらいたい」と言い出しました。「長いこと付き合いのあった我が家には無償で使用許可を出していたが、新しい人なら話は別」ということです。
この「借地料の問題」も、買い手がつきづらい要因の一つです。
私道の工事車両使用許可
「工事車両使用許可」についても覚書を取り交わすよう不動産屋から依頼がありました。
土地購入者が家を新築する場合、工事のために車両が入ります。その時工事車両は、実家の前の私道に停めざるを得ません。そういうケースでしばしばトラブルが起きるそうです。
そのため、土地を売却する前に、「工事車両使用許可」も得ておく必要があるとのことでした。
この覚書は比較的スムーズに取得できましたが、地主が意地悪をして許可をださないこともあるようです。
私有地の通行許可
これは不動産屋から聞いた話ですが、「私道の通行許可」でもめごとになるケースもあるそうです。
誰かの私道を通らなければ、自分の家にたどり着けない土地も結構あります。このようなケースで覚書を取っておかないと、のちに購入者がトラブルに巻き込まれるケースがあるがそうです。
紹介してきた通り、これまでは当たり前と思っていたことも、土地の売却を機に表面化してきます。それを知るという意味でも、まずは不動産屋と媒介契約を結ぶことをおすすめします。
売却に関係する問題点を早い段階で把握できていれば、机上の皮算用をして後でがっかりすることを避けられます。
空き家のまま放置することの問題
親が「新しい生活に馴染めず実家に戻らざるを得ない」という選択肢も残しておいたため、水道・電気・ガスは解約しませんでした。空き家のまましばらく放置したことにより、次のような思いがけないトラブルが発生してしまいました。
給湯器の故障・水漏れ
電気は解約しませんでしたが、留守の間は使わないのでブレーカーを落としていました。
そして冬の寒い日にそのトラブルは発生しました。屋外にある給湯器から水が噴き出したのです。
給湯器は内部の配管を凍結から守るために電気ヒーターで温めています。我が家ではブレーカーを落としていたため、その凍結防止機能が働かず給湯器の配管凍結による水漏れが起きてしまったのです。
東京近郊にある実家は冬と言えどもさほど冷えるわけではありません。取り付けてから2年も経っていない新しい給湯器ということもあり、予想外のトラブルでした。
給湯器から水漏れしたことにより次のような損失がでてしまいました。
1. 水漏れした分の水道代
⇒ 隣の家の人がすぐに気づいて水道の栓を閉めてくれましたが、3万円程請求されました
2. 給湯器の修理代
⇒保証期間内でしたが「凍結による破損」はメーカー保証の対象外と言われました。見積もってもらうとなんだかんだで9万円程かかると言われました
実家が「土地」として売れれば給湯器を直す必要がなくなるため、しばらくは故障したまま放置しています。
しかし、水道局からは「水漏れ分の水道代は、給湯器の修理が確認できなければ返金できません」と言われました。すなわち、修理しても9万円、修理しなくても3万円の損害というわけです。
ブレーカーを落としてしまうと給湯器にトラブルが発生するというのは知りませんでした。
冬の時期に実家を空き家にする方はご注意ください。とはいえ、ブレーカーは落とさざるをえませんので、給湯器(戸外)についている水道栓を閉めておくことをおすすめします。
家の傾き
先に話しましたが、実家を「家」として購入し、リフォームして住みたいという話しもありました。その人は建築関連の仕事をしており、内見をした時に家の状況を隅々まで調べました。
そして、家が少し傾いており、ジャッキアップしなければ長く住めないという結論に至りました。
家が傾いているとは全く気づきませんでした。しかし、建築関連の仕事をしている人が言うのですから正しいのでしょう。
それを聞いてからというもの、地震が起きるたびに何か問題が起きていないかと心配になります。
実家を空き家で放置しておくということは、それ自体がリスクであると認識しました。
誰も住まないことによる老朽化
空き家にしてしばらくは感じませんでしたが、久しぶりに実家に戻るとその老朽化の速さに驚ろかされました。屋根に伸びていたアンテナ線がいつの間にか外れて地面に落ち、外壁塗装の色もいつの間にか剥げていました。
水道メーターの蓋が陥没し、コンクリートの地面にひびが入っていました。
定期的に換気や掃除をしていた室内はあまり老朽化を感じませんでしたが、手を付けていない外観の老朽化はどんどん進みました。
もし、家を残して売りに出す場合は、時間が経てばたつほど老朽化が急速に進むことを頭に入れておいてください。
最後に
今考えると実家を売りに出すことに慎重になりすぎていた気がします。
買い手がついて売買契約を結ぶ段階となれば、様々な手続きが必要となるでしょう。しかし、不動産会社と媒介契約を結ぶ段階は、拍子抜けするほど簡単です。また、その後も別にすることはありません。
不動産会社の担当者と相談しながら売り出し価格を決めて、あとは買い手が来るのを待つだけです。
契約期間は3ヶ月なので、延長しても良いですし、別の不動産会社に乗り換えても、販売するのを中断しても構いません。
一方で、不動産会社と媒介契約を結ぶと、いろいろと良いことがあります。
・不動産会社が売りに出す物件をいろいろ調べて、問題点や必要なこと等を指摘してくれる
・売り出した価格でどれだけ引きがあるかを見ることができる
・媒介契約を結んだ不動産会社の力ややる気を見ることができる
・分からないことや困ったことがあれば不動産会社(専門家)に相談することができる
また、空き家の状態で放置するのはリスク以外の何物でもありません。老朽化、地震などの災害、泥棒や放火などのリスクがあり、価値はどんどん落ちていきます。
親が高齢であれば、認知症などになって意思能力がなくなってしまうリスクもあります。
所有者(親)に意思能力がなくなると、基本的には土地を売ることができません。その場合は家庭裁判所に出向いて「法定後見人」となるための手続きが必要となります。
手間もお金もかかりますので、できれば避けたいものです。
そういう側面から考えても、不動産屋と媒介契約を結んでおき、いつでも売れる状況にしておくことは大切です。
自分で買った家に思い入れがあるから、お父さんは相場よりもかなり高い値段で売れると信じてたわね
不動産屋から問題点が指摘され、適正相場が分かったことは良かったよ。母親がそれに納得してくれたから話しが進めやすくなったし
これまで強気の価格設定だったけど、少し値下げすればきっと買い手は見つかるわよ。不動産屋の担当者も親身になっていろいろ提案してくれるから助かるわ