実家の母親は歳をとるに従い不安や心配を口にすることが多くなってきました。今回は、高齢者が不安や心配を口にするようになった時の対応についてまとめました。
うちの母ちゃんはいつも不安や心配ばかり抱えていて、「昨日も寝れなかった」とよく言うんだ。年寄りになると暇になるから心配ばかりするのかね?
うちの母親はあまり心配ごとを言わないから、年寄り全てがそういうわけじゃないと思うわよ
ママちゃんの言う通りで、それは人によって違うよね。
年寄りだからこそ抱える不安や心配の原因もあるから、まずはそれについて知っておこう
目次
高齢の親が不安や心配を口にする原因
年寄りが不安や心配をよく口にするのには、年寄りならではの理由が存在します。その説明をするために、まずは年寄りの不安について見てみましょう。
高齢労働省が60歳以上の6,000人に対して行った「高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、多くの老人が次のような不安を抱えていることが分かりました。
・自分や配偶者の健康や病気のこと (67.6%)
・自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態となること(59.9%)
・生活のための収入のこと (33.7%)
いずれの悩みも切実です。
心身の衰えにより「健康・病気」の不安は深刻
高齢者が不安や心配をよく口にする理由の1つは、加齢による心身の衰えです。若い頃であれば、悩みに対して自分でなんらかの対応を取れていましたが、歳をとると心身の衰えと共に、悩みを解決する力がなくなってきてしまいます。
特に、「健康・病気」に対しては深刻で、これまでの長く生きてきた体には、経験したことのないような切実な不具合や病気がたくさん出てきます。
また、若いころであれば運動で予防したり、気力・体力で乗り切れてきたことも、歳をとるとできなくなってしまいます。
そのため、病院にかかり、薬に頼る生活にならざるを得ません。自分の力でできることはほとんどありませんです。
また、病院にかかるということは、それだけ医療費負担も増えるということです。すなわち、健康・病気の不安は「お金」の不安も生み出します。
平成29年度の厚生労働白書には、高齢になればなるほど医療費が増え、自己負担額も増えていく姿がグラフで描かれています。
「介護」状態になることは本当に恐怖
2つ目の原因は、「介護」という切実な不安が高齢者の目の前に迫っていることです。労働省が20歳以上の5,000人に対して行った「H15 高齢者介護に関する世論調査」では、介護に関して次のような不安があげられました。
・家族に肉体的・精神的負担をかけること (68.1%)
・介護に要する経済的負担が大きいこと (53.6%)
・収入がなくなること (27.9%)
・人生の楽しみが感じられなくなること (27.6%)
・食事や排泄,入浴など世話の負担が重く,十分な睡眠が取れないなど肉体的負担が大きいこと (62.5%)
・ストレスや精神的負担が大きいこと (57.9%)
・家を留守にできない,自由に行動できないこと (52.5%)
・介護に要する経済的負担が大きいこと (50.3%)
しかし、子供と離れて暮らす高齢者の場合、「介護」状態になるということは、本当に恐怖であり、どうしても避けたいものです。
2人で暮らしていれば、老々介護が強いられます。体が不自由な年寄りに課せられる「肉体的・精神的負担」はとてつもなく大きなものです。
「介護」は、自分一人の力では解決することのできない、高齢者が直面する大きな不安なのです。
父親はパーキンソン病で体が不自由なので、介護している母親は本当に大変そう。調査回答にはないけど、一緒に生きてきた旦那が介護状態になってしまった「悔しさや寂しさ」が母親の心に大きなショックを与えているみたい
うちの両親はまだ介護の必要はないけど、父親は糖尿病や脊柱管狭窄症があるし、母親は白内障で大変そうよ
自分で稼ぐことができないから「お金」の不安はつきまとう
3つ目の原因は、高齢者は「お金」を稼ぐ力がないため不安から逃れられないということです。
多くの高齢者は、これまで貯めた貯金と、国から支給される年金で暮らしています。しかし、年金だけで暮らしていくことは困難で、これまでの貯蓄を取り崩して生きているのが実態です。
一方で、病気になればお金がかかるし、介護が必要となれば大きなお金がかかります。
高齢の親が不安や心配を口にした時の対応
いつまで続くか分からない不安を取り除く
自分の命がこの先どこまで続くのかが分からないところが、人生の難しいところです。すなわちそれは、抱えている不安や心配がいつまで続くのか分からないということでもあります。
その状況が元になり、不安や心配の言葉が親の口から出てきます。それは、自分の力ではどうしようもない状況に、助けを求めていることでもあります。
そんな時大切なことは、これから先の姿を見せ、安心させてあげることです。そのためには、早い段階で親の今後の生活についての家族会議を開き、これから先の生活をある程度決めておくことが必要です。
子供には子供の生活がありますので、もちろん無理をする必要はありません。その場合でも、みんなの意見を早いうちにすり合わせて、時間をかけて決めていった方が良いでしょう。
ある程度先のことが決まっていれば、親も子供もそれに合わせて進んでいくことができるようになります。
そうは言っても、毎日の仕事などで忙しいし、お金に余裕もないから親の介護まで手が回らないよ。不安定で何が起こるか分からない世の中だし。兄弟だって協力してくれるか分からないし
だからこそ、早めに動き始めた方が良いよ。
いずれは考えなければならないことだし、今から考えておくといろいろな準備もできるし選択肢も増える。切羽詰まってから考え始めたら手遅れになることも多いよ
不安や心配を持ったときに、それを吐き出せる環境を整える
もう一つ大事なことは、親が不安や心配になった時、その愚痴を聞いてあげられる環境を整えてあげることです。
親と離れて暮らしている場合、親の状況が見えないため後手に回ってしまいます。
しかし、今の時代は離れて住んでいてもリモートでつながれる時代です。親の世代は言葉は知っていても何ができるかまでは分かりません。ましてや使い方も分かりません。
子供側が気を利かして環境を整えてあげることで、次のようなメリットが期待できます。
・離れていても親を気にしているという気持ちが伝わる
・話す機会が増え、両者の心の距離が近づく
・親や親の生活状況を把握できる
・自分の家庭の状況を親に理解してもらえる
・通信代などを抑え、低コストで利便性を手に入れられる
最後に
忙しい毎日を送っていると、離れて暮らす親のことは先延ばしになります。しかし、高齢になった親や実家の問題は、遅かれ早かれ子供たちにのしかかってきます。
いずれ起きる問題なので、早めに覚悟を決めて準備した方が、うまく行きます。
親は高齢になればなるほど、問題解決能力が低くなります。心身の衰えもありますが、毎日、テレビの偏った情報しか入れていなければ、考える力も衰えてきます。インターネットも使えないので、ネット検索して情報を集めることもできません。
親の口から不安や心配が出てくるようであれば、それはこれから先のことを真剣に考え、対策を打つチャンスでもあります。
先のことがある程度見えていれば、親の不安も子供の不安も減らすことができます。頻繁に親とつながれる環境があれば、お互いを理解しあうことができます。
親だけでなく、自分の家庭を守るためにも、早めに動き出す方が得策です。